脂肪肝について
こんにちは、院長の青山です。
春の健康診断で、肝臓の異常を指摘される方もいらっしゃると思います。
ラーメンや揚げ物など、脂っこいものの食べ過ぎや生活習慣の乱れなどが原因になることもあります。
今回はこれらが原因になる脂肪肝について解説いたします。
当院では、超音波検査にて脂肪肝の診断や肝臓の硬さなども調べることができ、診療に力を入れてますので参考にしていただければと存じます。
長い文書になりますので、お時間のない方は最後にまとめを記載してますので、そこだけでもお読みいただければ幸いです。
脂肪肝は主に飲酒が原因のアルコール性と非アルコール性に分けられます。
現在、世界的に肥満、生活習慣病の人口増加に伴い、非アルコール性(非アルコール性脂肪性肝疾患: NAFLD)が急増しています。
2030年には成人検診者の約30%に脂肪肝が認められるようになるかもしれないと言われています。
原因としては生活習慣病などの影響が強いものの、遺伝的要因が大きいことも知られています。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は非進行性の非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、肝硬変・肝癌に進行することのある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)があります。
また、NAFLからNASHに移行することもあります。
我が国でのNAFLD/NASHにおいて生活習慣病の合併率は、脂質異常症 約50%/60%、高血圧 約30%/60%、血糖値が高い方 約70%/70%、メタボリック症候群 約40%/50% と報告されています。
特にNASH患者さんの90%はBMI 30以上の肥満であるとのデータもあります。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の肝脂肪化の評価方法
- 超音波検査
最も一般的な検査で当院でも行える超音波検査です。人間ドックなどでも行われています。ただ、30%以上の肝脂肪を有す方では良好に検出できますが、それ以下だと精度が下がるという欠点があります。
- MRI
精度の高い検査ではありますが、大きな病院以外では行えず、費用も超音波より高額になることが欠点です。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の肝線維化の評価
NAFLDは、ほとんど進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、肝硬変・肝癌に進行することのある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)に分類されますが、肝臓の線維化の程度が予後を規定する最も重要な因子であるといわれています。
このことより、肝臓の線維化を正確に評価することが最も重要です。
従来の方法としては、肝臓に針を刺し、肝臓の組織を一部採取したものを顕微鏡でみる方法があります。ただ、この検査は体の負担が大きく、合併症のリスクもあります。
したがって、なるべく負担なく肝臓の線維化を評価することが重要になります。
- 血液検査による肝線維化評価
FIB4 index という計算式があり、下記の式で求められます。
FIB-4 = (年齢×AST(IU/L))/(血小板数(10^9/L)×√ALT(IU/L))
ただ、計算式に年齢が入っており、高齢者に多い日本では、過剰診断につながる可能性があると言われています。
- 超音波エラストグラフィ
超音波検査でも肝臓の線維化を評価することができます。ただ、全ての超音波機器で行えるわけではなく、検査できる機会は限られています。当院ではこの、「超音波エラストグラフィ検査」を行うことができます。下記の写真の超音波機器です。
痛みもなく15分程で終了し、体に負担なく検査することができます。
この検査は、外部から与えた超音波パルスや振動によって発生する剪断波の測定することで、肝臓の硬さを測定する方法です。剪断波の伝搬速度が早いほど硬い物質であり、肝臓の線維化が進み、肝硬変に近づいているといえます。
- MRエラストグラフィ
最も診断精度は高い検査ではありますが、MRI検査の一種でのすので、時間がかかることや、費用の問題、大きな病院でしか行えないというデメリットがあります。
NASHに対する薬物療法
生活習慣の改善、肥満があれば体重の減量が重要ですが、下記の薬剤が有効と言われています。
- 糖尿病治療薬
チアゾリジン誘導体であるビオグリダゾン、メトホルミン、SGLT2阻害剤、GLP-1受容体作動薬が有効というデータがあります。
NASHに対する保険適応はないので、糖尿病があるNASHの患者さんには良い適応となります。
- ビタミンE
ビタミンEによる抗酸化作用がNASHの進行に関わる炎症と肝細胞の損傷を軽減するといわれています。ただ、NASH に保険適応はなく、脂質異常症や末梢循環不全などに適応があります。
- 脂質異常症治療薬
スタチン系薬剤、エゼチミブ、フィブラート系薬剤といった脂質異常症で一般的に使用される薬剤の効果も期待できる可能性も示されています。
NASH に保険適応はなく、脂質異常症があるNASHの患者さには良い適応になります。
- 降圧薬
アンギオテンシンⅡ受容体(ARB拮抗薬やアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が有効とのデータがあります。血液検査での肝障害の所見を改善したり、肝臓の組織の改善、繊維化が抑制されることも示されています。
NASH に保険適応はなく、高血圧があるNASHの患者さんは良い適応になります。
今回のブログは以上です。長々と書いてしまいましたが、下記に簡単にまとめを記載します。
1. 良く聞く病気である脂肪肝ですが、肝硬変・肝癌に進行することのある非アルコール性脂肪肝炎(NASH)という病気があります。
2. NASHは肝臓の線維化の程度が予後に関わるので、肝臓の線維化評価することが重要です。
3. 肝臓の線維化を、簡便で安全に評価する方法として「超音波エラストグラフィー検査」が有用です(当院でも行うことができます)
4. NASHに対する保険適応になっている薬剤はありませんが、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病の保険適応になっている薬剤の有効性が報告されています。
肝臓について心配なことや、健診で肝機能障害を指摘された方は、当院までお気軽にご相談ください。